お気の毒を、よそ事のように言って、女の人が歩み出すと、お角は、むしろ呆気《あっけ》に取られたようで、
「それでもまあ、お帰り下すって安心を致しました」
お角さんの気象では、なぐりつけてやりたいほどのところでしょう。それを虫を殺して、なだめにかかる言葉の様子は、全く泣く子と地頭には勝たれないといったような表情でした。本来、そうまで下手に出るはずはなかろうに、先天的に、お角さんほどの女が、この人にだけは一目も二目も引け目を感ずるらしい。女の人はお角に命令するように言いました、
「あの、道でお連れのを一人見つけて来ましたから、今晩はわたしの座敷に泊めて上げるようにして下さい」
「あ、そうでございましたか、承知いたしました。さあ、お嬢様のお連れの方を、こちらへ御案内申しな」
といって、お角が女中に指図をし、自分もまた、この我儘《わがまま》な御主人(?)の引きつれた客人に粗相があってはならないという気持で、米友が草鞋《わらじ》を解いている上り口のところまで進んで来て、
「お疲れでございましたろう、さあ、どうぞ……」
ともてなしました。
草鞋を解き終った米友――女中が汲んでくれた盥《たらい》
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