ました。
 さりとて、こうなっては、冗談《じょうだん》だ、冗談だと逃げを打つわけにもゆかず、許せ許せと、折れて出るわけにもなおさらゆかず、どうにもこうにも、抜いて斬るよりほかはないという羽目に陥ったのは、自業自得とは言いながら、よその見る目も笑止千万で、お角さんとしては、むしろ、この若ざむらい連に同情して、助け舟を出してやりたい気象が、むらむらしましたけれども、旅では万事、控え目にすること……と、立つ気をおさえていました。
 悪い若ざむらい連の立場は、どうにもこうにも、抜いて斬らなければならないことになって、しかも抜いて斬った結果は、いよいよ悪くなるということに自分が気がついて、自分がおびやかされています。
 この町人の鼻っぱしの予想外に強いのに、後ろについている奴も遊び人上り、それを芸妓共が煽《あお》っている。そのほか、いざ、乱闘となった日には、すべての弥次馬の同情が、決してこっちには向いて来ない、次第によっては自分たちが袋叩きの憂目《うきめ》にあって、生死のほどもあぶない、ああ、やり過ぎたわい――と、見るも無惨な窘窮《きんきゅう》の色が、売りかけた方に現われたのを見て取った買方が、
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