手も足も出ない茂太郎は、声だけを上げて叫んでいる。
その網を取払って、そうして、茂太郎の口から聞くところによれば、熟睡中に不意に襲いかかって、自分の口をおさえ、その上をこの通り十重二十重《とえはたえ》に包んでしまった者がある。しばらくもがいた後に、ようやく咽喉《のど》の自由だけが出来たから、さいぜんから叫びつづけているが、身の自由は利《き》かない。叫んでも、今まで誰も来てくれない!
それを聞いてみると、酔いどれとは言いながら、たしかに、計画的にやった犯行だというよりほかはない。茂太郎を抑え込む以前には、多分主人公駒井の室の動静をもうかがっての上だろう。たしかに主人公がいないと見極めて、急に悪性《あくしょう》がこみ上げて来て、この蛮行に出でたものかも知れない――この雑然、噪然《そうぜん》、困惑の中に、金椎のみは別世界にいるように、いっかな夢を破られてはいないことがかえって不憫《ふびん》でもある。
すべてを、もとのようにあらしめ、もゆる子と、茂太郎とは自分の次の一室において、駒井自身も寝についたが、その夜は、ほとんど眠られませんでした。
翌日、人を集めて、旨を含めて、マドロスの行方
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