駒井甚三郎は、マドロスが酔倒していた現場まで来て見たけれども、もはや、そのところにマドロスの形がありません。
そのあたりを、暗い中で、相当にあたりをつけて見たけれど、単にいたところの人が見えなくなったというだけで、そのほかにはなんら異常の気配は見えないようです。
つまり行違いになったのだ、先生、ようやく目がさめて、あわてふためいて立戻り、いまごろは、寝床へもぐり込んで、前後不覚の夢を繰り返しているのだろうと、駒井はタカをくくって、そうして、それから海岸の方へと歩みを進めました。
その時も、天文の興味が頭を去らないものですから、思わず頭を天空にもたげて、そうしてさいぜん観察した星の進行を注意しつつ海岸を歩いて、家路の方へ静かに踵《きびす》をめぐらした時です。
急にあわただしい空気があって、バタバタと人の足音があって、やがて夜目にもしるき着物の色がこちらへ向って見えて来ましたから、駒井が驚いて足をとどめていると、まもなくせいせいと息をきる音。それらの雰囲気で、よくわかっている、これは珍しくもない兵部の娘、もゆる子であるということを、駒井が直ちに感づきました。
そこで、またはじま
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