致しておりますのに、お雪をはじめ連れの者が、絶えずお世話になっておりまする」
非常にとおりのよい、むしろ、品のよいと言ってもよい挨拶ぶりでしたから、北原も、村田も、決して悪い気持はしませんでした。
ただ、こちらまで迎えて挨拶に来ないのは、それは眼が不自由なせいで致し方がなく、今日までの隠退ぶりも、あらゆる病気のそれよりも、物を見る光を失われているという不自由のさせる業《わざ》だときめてみれば、当然のことだと同情を起さないわけにはゆきません。
案外と思わせられたところは少しもないことが、かえって案外であったかも知れないと思います。
「いやどう致しまして、お雪ちゃんが、この宿にいて下さることのために、どのくらい我々が救われているか知れやしません」
村田が少し新しい言葉づかいで、お雪ちゃんを讃美したのは、当然これは、この人の妹だ、この人はお雪ちゃんの兄さんだと、判断してしまったからです。
そこで竜之助が、また挨拶しますには、
「では、どうぞ、そちらの炬燵《こたつ》にゆっくりとお入り下さいまし、拙者はこのままで失礼を致します。こうして相離れていながら、お話を承りたいものでございます」
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