は、やっぱり日本に、最初から存在したもののように思われてならぬ、樹ぶりから枝ぶり、趣味好尚に至るまで、全く日本にふさわしいものだ」
と講釈をして、また次の如き順序の選名――
「青煙梅」
「蜂蝶梅」
「紫芝梅《ししばい》」
「微風梅」
「斑白梅」
「黄老梅」
「柳楊梅」
「四運梅」
「石蜜梅《しゃくみつばい》」
「餐露梅《さんろばい》」
「幽澗梅《ゆうかんばい》」
「銀床梅」
「深障梅」
それは、あらかじめ選んで置いて、それを転写するでさえ、そうは迅速に参るべからざるものを、いちいち、その景を見、境を見、木ぶり枝ぶりを見、来歴を参考として、即座に選んで、サラサラと書き飛ばすものだから、これは、たしかに容易なことでないと、村人を驚かすに充分でありました。それよりも、あまりに選名が早いので、それに縄をつけて、木に結ぶことの奔命《ほんめい》に窮するほどの与八。
この前後から、村々の子供をはじめ、閑人《ひまじん》がすべて出て来て、梅買い評定をのぞきに来る。
それだけではない、最初のほどは一匹二匹と出て来て、遠くムク犬の雄姿をのぞみ、あえて虎威をおかすことをしなかった附近の犬がようやく数を増して、何十頭というほど群がり出し、それが遠くから畏《おそ》る畏る、ムク犬の雄姿をながめていたのが、ようやく、なついてくると見えて、だんだんちかよって来ると、ついに皆、ムク犬の前後左右に尾を振って、これに朝するの有様でありました。そこでムク犬が動くと群犬が従う。
何と思ったか、この時、ムク犬は、主を離れてやや早足に、丘陵をかけのぼると、群犬がまた挙《こぞ》ってこれに従う。
かくて、ムクが上れば群犬も上り、ムクが止れば群犬もとどまり、ムクが走れば群犬も走る――それに興を催してか、ムクと、群犬とは、この人間たちとは遥かに離れて、やがて行方を見せなくなってしまいました。
六十一
その同じ日の同じ時刻に、ちょうど、東妙和尚や与八が梅を買っているところの裏山で、一人の百姓がしきりに薪をこしらえておりました。
ところは、ひっそりとした雑木林。木を伐《き》る音がこだまして、いよいよ森閑を加える趣の山林の中に、たった一人で精出して、手頃の木を伐っては、その太いところをマキにこしらえ、枝のところをソダにしている。
これは木樵《きこり》ではありません。あたりまえのお百姓が農閑
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