するものが、その興味の中断を試むるものが、この有野王国のうちに存在するはずはありませんが、今日は少なくとも、その暴女王をして一時《いっとき》、呆気《あっけ》に取られて返すべき言葉を知らないほどの事件に出会《でくわ》させました。
「まあ、お嬢様、御無事でいらっしゃいまして何よりでございます、ほんとに、よく御無事でいらっしゃいました」
 こういって、遠慮なく、障子越しに、なれなれしい言葉を聞いたものだから、暴女王が、悪女の名を記す筆をとどめて、あっけに取られました。
 この王国のうちに、自分に対して、こんななれなれしい、涜狎《とっこう》に近い言葉づかいを為し得る奴がどこにいる。
 のみならず、障子越しに、こんななれなれしい言葉をかけてから、縁側へ進み寄って、
「御無礼いたします、お嬢様」
と言って、障子を引開けてしまったのです。そこでお銀様、
「あ、お前は両国の親方じゃないの」
「はい、角《かく》でございます、どうも御無沙汰いたしました」
「まあまあ、お前」
 さすがのお銀様が、あきれて物が言えなくなったのも道理であります。
 女軽業《おんなかるわざ》のお角は、いつもと同じような水々しさと、そらさぬ愛嬌を以て、ここへ現われたのには、さしものお銀様にとって意外の限りでないことはありません。
「だしぬけに、あがりまして、申しわけがございませんが、お嬢様が、こちらにいらっしゃると聞いて、あんまり、おなつかしいものですから、つい、こんなに、ざっかけに押しかけて、お仕事のおさまたげをしてしまいました」
 息をはずませて、お角がこう言いました。これに対して、お銀様に悪意を表するの機会を与えないほどの呼吸でありました。お銀様とても、この意外は強《し》いてつむじを曲げるほどの意外ではなかったと見え、
「ほんとに、親方、珍しいことですね。どうして、いつ、こっちへ来ました。まあ、お上りなさい」
といって、お銀様は、あたりを取りかたづけてお角を招きます。
「まあ、お上り……」
といって、この暴女王から特権を与えられたものは、あの間《あい》の山《やま》から流れて来たお君という薄命の少女のほかには、ちょっと類例を見出し難い記録でしょう。
 それを、ハニかんだり、辞退したりするようなお角ではありません。
「では、御免下さいませ」
 ここで、お銀様とさしむかいになると、お角はまた打ちつけに、
「お嬢
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