の事なら、もう大丈夫よ。あの晩、備前屋さんへ入って、江戸のお客様のものを盗《と》ったのは、君ちゃんではないこと、友さんでもないこと、そりゃわかりきっているけれども、証拠が物を言ったあの時のことでしょう、どうしようもなかったのね。それが今となっては、すっかり晴れてしまって、誰だって一人も、友さんや君ちゃんを疑ぐってるものはありゃしません、お前さんたちは、大手を振って国へ帰れるようになっているのよ」
「そうかなあ」
「そうだともお前、あの時の泥棒は別にあって、名乗って出たんですとさ」
「どこの奴だい」
「名乗って出たけれど、まだつかまらないんですとさ」
「おかしいなあ、名乗って出た奴がつかまらねえというのは」
「そんな事は、どうでもいいのよ。それでね、土地の人も、お前さんたちを、大へん気の毒がって、友さん、お前のお墓が、もうちゃんと出来ているのよ」
「おいらのお墓が出来てるのかい」
「ええ、お前さんは、たしかに尾上山から突き落されて、お処刑《しおき》になってしまったんだから、正直者がかわいそうに、むじつ[#「むじつ」に傍点]の罪で死んだといって、皆さんの同情が集まって、今では米友|荒神《こうじん》という荒神様が出来て、それがお前のお墓になっているんだよ」
「ばかにしてやがら」
 米友が唇を反《そ》らして嘯《うそぶ》きました。現在こうしてピンピン生きている者のお墓をこしらえた上に、荒神様に祭り上げるなんて、洒落《しゃれ》が過ぎてらあ! とでも思ったのでしょう。
「ばかにするつもりでしたんじゃないのよ、友さんがかわいそうだ、気の毒だ、盗りもしない盗人《ぬすっと》の罪に落ちて殺されてしまったと思うから、みんなして、荒神様をこしらえてしまったのよ、こうして生きていると知っていれば、誰がそんなことをするものかね」
「そりゃ、そうかも知れねえが、生きている時は、さんざん人を粗末にしやがって、死んだと思って荒神様に祭り上げるなんて、ほんとうにばかにしてやがら」
「悪く取っちゃいけないよ、友さん、たとえ荒神様だって神様のうちだろう、生きていて神様に祭られるなんて、結構じゃないか。それでお前の方は死んだものと、みんなあきらめているが、お君ちゃんばっかりは、生きているのか、死んでいるのか、ちっともわからないんだもの」
「うむ……そのはずだ、生きているか、死んでいるかわかるめえ」
「ことに、
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