るものであることは、駒井をして非常に驚喜せしめました。
マドロスがサヴァンナ式といったのは何かの間違いだろう。
それと同時に、駒井の首を傾けさせたのは、この船が密猟船だとは言い条、内部には、漁具や漁獲物がわりあいに少なくして、武器や食糧の類が比較的に多く積込まれているらしいことです。
海賊同様の密猟船でありながら、軽小とはいえ螺旋式《らせんしき》の蒸気機関を持っているところ、それらと思い合わせると、単に密猟の船ではなく、相当の要路の旨《むね》をうけて、日本の近海へ様子を見に来た船と見ないわけにはゆきません。
そんなことは、どうでもよいとして、まず何よりも螺旋式の機関を持っているということが、この上もない掘出し物――引揚げ物だと、駒井の心を勇み立たせました。
こうして第一日は、輪廓と、内容の要部の偵察を遂げ、明日よりは細部にわたり、全部の引揚げが可能か、一部分の取りこぼちが有利かに向って、精細なる実地検分を遂げしめようとしている時に、一つの故障が持ち込まれました。
この故障というのは、もとより官辺から来たのではない、官辺は上に述べたる如き諒解《りょうかい》がある。
さらばこ
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