間のうちの選ばれた偉人英雄といったような種類の人にしてからが、逢うて強烈な感激を受ける人もあれば、逢うて失望こそしないが、案外の平穏に、茫然自失するといったような種類の偉人もありましょう」
「それは、あるかも知れません」
「たとえば――私は、いつぞや君から、日蓮上人のことを鼓吹せられて、全く新しい世界を見せられたように感じました、そして、私の癖として、一応君から教えられたところを追従して、遅蒔《おそま》きながら日蓮上人の研究をはじめたことは、君も御存じの通りです」
「いやはや」
「あれから、僕の研究癖というようなものが嵩《こう》じて、日蓮について、まず現在のところで能《あと》うだけの研究をしてみたつもりだが、日蓮を研究して得たところのものは、やはり君に教えられたところ以上には出でることができなかったが、案外にも、日蓮を研究して、他の大きなものに突き当ったことは、まだ君に話さなかった」
「聞きません――お弟子がお弟子だから、さだめてすばらしい出藍《しゅつらん》ぶりと存じます、どうか、この鈍骨の先達《せんだつ》に、その研究の結果をここで教えて下さい」
「なあに、それほどの創見でもなんでもな
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