、お前、踊ってごらん」
「見ていればわかるけれども、自分じゃ踊れませんよ」
「出鱈目《でたらめ》の踊りなら、いくらでも踊るくせに。さあ、おいで、今度は二人で、威勢のいいところを踊ろう」
「何を踊りましょう」
「何をって、お前のなんぞはみんな出鱈目じゃないか、何でもいいように踊り、あたしの方で合わせるから」
「それじゃ、潮来出島《いたこでじま》を踊りましょう、でなければ、さんどころ、さんどころ」
「何でも勝手に踊りなさい、さあ」
兵部の娘がさしのべた手をとった茂太郎は、やっぱり般若の面を左の小腋《こわき》にして立ち上ると、勢いよく、
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いざやさんおき
津島の参りてさんならさんなら
さんどころ
エイサノエイサノエイ
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と足拍子面白く踊り出したから、兵部の娘もそれに合せて、茂太郎の手を引いたまま、道行《みちゆき》ぶりで踊り出しました。
友は持つべきもの、弁信法師がついていれば、こうまで有頂天《うちょうてん》にはなるまいに。
片手の自由が般若の面に殺されているのに、片手は兵部の娘に取られているものですから、茂太郎は身体《からだ》だけで丸太ン棒
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