「思い出すよじゃ思いが浅い――というわけでもあるまいが、ちょっと愛くるしい娘だな」
「第一愛想がいいね、人をそらさないところがあるが、それといって、それ[#「それ」に傍点]者《しゃ》のするワザとさがない、天然に備わっているチャームというものがある」
 丸山勇仙は、多少語学の素養があるから、それでチャームというような言葉をつかってみるのでしょう。仏頂寺弥助にはわからない。わからないなりで反問もしない。
「どうもいかんな、女はくろうと[#「くろうと」に傍点]に限るよ、いかにほれてみたところで素人《しろうと》では、うっかり冗談もいえない。第一、今のが宿の娘であるとか、女中とかいうことであれば、お愛嬌に、お酌の一つもしてもらうことに遠慮もいらないが、客であり、ことに保護者がついていたんでは、万事休すだ」
「左様さ、保護者のある女は仕方がない」
 二人がしきりに保護者呼ばわりをして、何か残念がっているその噂《うわさ》の主《ぬし》というのは、想像するまでもなく、ここに来ているお雪のことなんでしょう。
 昨晩か、今晩か、二人が着いた時、多分お雪あたりが居合わせて、宇津木兵馬――二人も心得て兵馬とはい
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