越したことはありません。何しろ日本という国は、温泉がふんだんにありますからなあ、この点ではまことに仕合せな国に生れたものですよ。燕《つばくろ》の下の中房へ行きましたか。ああ、そうですか。この近所では、飛騨の平湯《ひらゆ》の温泉、蒲田峠《がまだとうげ》の蒲田の温泉というの、それから上高地の温泉も、これを山の裾越しに北へ行くと、あんまり遠くないところにあります。どうです、ひとつその上高地の温泉へ御案内をしましょうか。なあに、まだ雪もそんなに深くはなし、ここへ冬籠《ふゆごも》りをするよりは、また奥深くていっそう面白いですよ。帰りたけりゃ、いつでも帰れますよ。雪が深けりゃ深いように、歩き方もあるにゃあります、だが、山は慣れないうちは、もう全く案内者のいう通りにならないとあぶのうござんすよ、血気にまかせてはなりません。ひとつ乗鞍ヶ岳へ案内をして、朝日権現の御来光の有難いところを拝ませて進ぜましょうか。とにかく、ゆっくり御逗留《ごとうりゅう》でしたら、遊びにおいで下さい、梨木平《なしのきだいら》というのを通って無名沼《ななしぬま》へ出ると、その沼のほとりにわたしの小屋が見えます。誰がつけましたか、
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