来て見ると、六曲|屏風《びょうぶ》が一つ、自分の寝床の前に立てめぐらしてありました。
 まあ、すべてにおいて、入りかわり立ちかわり、親切と好意を示してくれる人がある。
 独《ひと》り寝の旅の枕が寒かろうとして、屏風を持って来て貸してくれたのは、宿屋が客に対する商売気の親切ではなく、同宿の冬籠《ふゆごも》りの客同士の思いやりから出ているのだ。
 有難いと思って、もうかなり更けていることでもあるから――但しこの座敷には、最初から行燈《あんどん》の火が細目にしてあったものです。衣服を改めて、遠慮なく寝床の中へ飛び込んでしまいました。
 で、かなり勢いよく床について、燈火を消してしまおうとする途端に、その六曲屏風には、一面に墨絵の竹が描いてあるなと思いました。それは墨竹ではなく、全体に竹藪《たけやぶ》として描かれてあるもののようでしたが、それを認めた途端に、燈火《ともしび》を消してしまったから、自然、まもなく眠りに落ちた時の兵馬の夢が、竹藪に入って行くのはぜひもないことです。
 絵に見たのは墨絵でしたが、夢の中では、兵馬は、真蒼《まっさお》な、限りも知られぬ竹藪の中に彷徨《ほうこう》していると
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