をほどいてみたが、別段、深い冥想《めいそう》の底から、安祥として、現世の色界《しきかい》に戻って来たという足なみでもなく、そうかといって、退屈しきって、所在なさに、四肢の置き場と、顔面筋肉とを、無意味に変化させてみようというのでもない。動いてはじめて存在が知れたような透明な、しかし白濁な色を以て、ちょっと身動きをしてみたまでであります。
 腕組みを解くと共に、ちょっとまた小手が動くと、するすると座右の刀が膝に上って来ました。
 この人のは、刀を手にとるのではない、合図をすれば刀が膝に上って来るのです。ちょうど、乳を求むる子が、母の膝に本能的にはい寄るように――そこで刀が膝に上って来た時は、当然それに乳を与えねばなりません。
 刀が膝へ上った時に、向うの襖《ふすま》の下へピグミーが現われました。
 それは多分、弁信の前へ現われたピグミーと同一|眷族《けんぞく》のものに属するのでしょう。そうでなければ、全く同一物かも知れません。真黒な四肢五体に、長い帽子をかぶって、帽子もろともに、身のたけが一尺五寸には過ぎないでしょう。
 ピグミーは必ずしも悪魔ではありませんが、よく悪魔の真似《まね》をし
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