五木と称《たた》えている者もあるようでございます」
「なるほど。森林美も大したものだが、これを金に踏んだら素敵なものだろう」
「富にしても、容易ならぬ富でございます」
「尾州の奴、うまくやってやがらあ……」
と道庵は、あぶなく口が辷《すべ》って、それを取返すもののように、
「尾州様も大したものをお持ちなさいますねえ、お金にしたら大したものでござんしょう、木曾は尾州様のお金倉だ」
イヤに改まったものですから、僧形《そうぎょう》の同職も高らかに笑い、
「全く、その通りでございます、木曾は尾州家の無尽蔵《むじんぐら》でございましょう、それにつきまして、こんな話がございます」
僧形の同職もまた改まったから、道庵も少し改まって、
「どんな話?」
「左様でございます、天保の水野越前守様の御改革の時でございました」
「なるほど」
「あの時分、大公儀もずいぶん、経済には難渋しておいでになりましたからな」
「今だってそうだよ、今だってふところ[#「ふところ」に傍点]工合《ぐあい》はよく無《ね》えんだよ、何しろ八百万石の台所で、時代を経るに従って、子孫が贅沢《ぜいたく》は覚える、諸式は高くなる、江戸の
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