こう言って心配しているうちに、急に面《おもて》の色がくもってきて、
「もしかして、あの子はまた人にさらわれて、人気者にされるんじゃないか知ら、そうだと本当にかわいそうだ」
こちらへ来て対面の後、話のついでには茂太郎は、いかに人気者という商売が、いやな商売だかということを、兵部の娘に語って聞かせたものです。後ろにいる奴が薄っぺらで、高慢で、雷同で、阿附《あふ》で、そうして、人と、物とを、食い物にすることのほかには何も考えない。ところで、人気者同士には、また人気者同士で、競争があるのだからやりきれない。好んでそのイヤな人気者になりたがって、給金がよけい取れるとか、人にチヤホヤされるとかいって納まり返り、またその納まり返った人気を、他《はた》から奪われまいとして血眼《ちまなこ》になっている。おそらくこの世に、興行師のために、人気者として祭り上げらるるほど悲惨なものはあるまいと、山海の自由に生い立った自然の子が、身を以て痛感しているらしいのを、兵部の娘も全くそれに同情しているものですから、今、そのことを考えると、急に心が暗くなりました。
しかし、安心したことには、薄明りの海の光で見ると
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