ら、朝飯を食べる。
一方、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百は、しにもの狂いで小田原の町々、辻々を、かけめぐっているが、前に立ちふさがる者も、後ろから追う者も、どちらもその姿をありありと認めながら、どうしても簡単にはつかまらない。
百の駈足が、想像外にはやいのみならず、その身のこなしが、油のように滑《すべ》っこく、ちょっとやそっと捉まえたのでは、ツルリツルリと抜けられてしまうのみならず、今は片手に脇差を抜いて振り廻しているのだから、せっかく追いつめたものも、立ちふさがったものも、キワどいところでいなしてしまう。
そこで、無人の境を行くようなあんばいで、唐人小路まで走って来た時分、この辺を突破されると、まもなく海辺へ出るのだが、海辺へ出られてしまっては事だ。
やはり、その時分のこと、例の講釈師南洋軒力水と、その弟子分になっている心水という二人が、江戸へ下るとてちょうど、この唐人小路へ来合わせたが、
「おやおや、がんりき[#「がんりき」に傍点]がやって来たぜ」
「面白い、面白い、死物狂いでやって来た」
「奴、つかまるか知ら」
「なあに、あいつが、なまなかのことで、つかまるものか」
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