、鉛筆を取って、
「ナニ、世界一、誰ガソウ言ッタ」
金椎はそれを見ながら、口で答える、
「西洋人が言いました、料理では、支那が第一、日本が第二、ヨーロッパは第三であると言いました」
「ソレハマタ、ドウイウワケデ」
「西洋人が申します、支那の料理、口で味わうによろしい、日本の料理、眼で見るによろしい、西洋の料理、鼻でかぐによろしい――そこで、つまり料理は食べるもの、味わってよろしい支那の料理が第一でございますと言いました。しかし、わたしの料理なぞは問題になりません、真似《まね》をするだけのものでございます」
駒井甚三郎はこの一言に趣味を感じ、果して支那料理なるものが、それほど価値のあるものか知らとの疑いを起し、最近、江戸へ書物材料を集めに行った機会に、料理書とおぼしいものを二巻ばかり持ち来って、自分が感心して読んだ後に、それを金椎に与えると、金椎は喜んで、それを大きな紙に写し取って壁間《へきかん》に掲げました。今も金椎の頭の上に見ゆるところのものがそれです。
この壁間に掲げられた料理の書というものは、無点の漢文ですから、誰にも楽に読みこなせるという代物《しろもの》ではない。また読み
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