でも当時のままに残っておりますが、左様、土蔵といったところで、一間半に二間ぐらいのあら[#「あら」に傍点]壁作《かべづく》りのおんどる[#「おんどる」に傍点]みたようなもので、本宅が火事に逢ったものだから、一茶はこの土蔵の中に隠居をして、その一生涯を終りました、その土蔵の中へ、ジャガタラ芋《いも》を転がして置きました、たまに、わたしどもみたような人間が訪れて礼拝するものですから、その子孫連中があきれて、何のためにこんな土蔵を有難がるのか、わからない顔をしている有様が嬉しうございました……西洋の国では、大詩人が生れると、その遺蹟は国宝として大切に保護しているそうですが、日本では、一茶のあの土蔵も、やがて打壊されて、桑でも植えつけられるが落ちでしょう。一茶というものは、時代とところを離れて、いつまでも生きているものだから、遺蹟なんぞは、どうでもいいようなものですけれど……一茶の子孫の家ですか、それは柏原の北国街道に沿うて少し下ったところの軒並の百姓家ですが、今も申し上げた通り、自分の先祖の有難味を知らないところが無性《むしょう》に嬉しいものでした。家を見て廻ると、あなた、驚くじゃありません
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