まで知っているところを見ると、この人は国学のみならず、現代の知識にもなかなか明るい人と見える。
 その翌日から万葉集の講義が始まりましたが、その講義は良斎らの座敷を選ばず、名物の炬燵《こたつ》を仲介することもなく、この炉辺をそのまま充《あ》てることになりました。
 一冊の万葉集を真中に置いて、炉の一方には良斎先生が陣取り、それと相対して北原賢次とお雪ちゃん――陪聴《ばいちょう》の役として留守番の喜平次も顔を出せば、お雪ちゃんの連れの久助さんも並んでいる。
 池田良斎は、燃えさしの粗朶《そだ》の細いところを程よく切って、それをやや遠くの方から万葉集の字面に走らせ、
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こもよ
みこもち
ふぐしもよ
みふぐしもち
この岡に
菜《な》摘《つ》ます児《こ》
家きかな
名のらさね
そらみつ
やまとの国は
おしなべて
吾こそをれ
しきなべて
吾こそませ
われこそはのらめ
家をも名をも
[#ここで字下げ終わり]
 一通り訓《よみ》をして、それからいちいち字義の解釈を下して、全体の説明にうつりました。
「この歌は、雄略天皇様が、あるところの岡のあたりで、若菜を摘んでいる愛らしい乙女
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