岳へお登りなさいませ、そうして、朝日権現の御前に立って、蕩々《とうとう》とのぼる朝日の御陽光を拝んで御覧あそばせ、それはそれは、美麗とも、荘厳《そうごん》とも……」
と言いかけて、美麗荘厳はこの人に向って、よけいなことだと気がつきました。

         三十一

 宿では、お雪ちゃんが炬燵《こたつ》に入って人形に衣裳しているところへ、竜之助がフラリと帰って来ました。
「あ、先生、お帰りなさいまし」
 衣裳人形を片手にして、お雪は帰って来た竜之助を見上げると、竜之助は刀を床の間へ置いて、静かにお雪ちゃんと向い合わせの炬燵に手を入れました。
 お雪はにっこりと笑って、
「お迎えに上ろうと思いましたが、たぶん鐙小屋《あぶみごや》だろうと思ってやめました」
「そうでしたか、わたしも、お雪ちゃんを誘って行こうと思ったが、歌に御熱心のようだから、一人で出かけましたよ」
「ええ、ずいぶん、あの先生偉い先生よ、お歌の方の学問では京都でも指折りの先生ですって……」
「それはいい先生が見つかって仕合せだ」
「全く仕合せよ、あなたには武術の護身の手というのを教えていただくし、あの池田先生には歌を教えて
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