さん、あなたは死神につかれています、死神に……」
 男妾の浅吉の必死の力を、さしも大兵《だいひょう》の後家さんが、とうとう突き飛ばしきれず、それに取押えられてしまいました。
 ほどなく薯虫《いもむし》が蟻に引きずられて行くように、この大兵の後家さんが、男妾の浅吉に引っぱられて、沼の岸を逆に戻って行く姿が見えましたが、やがて鐙小屋《あぶみごや》の前へ来ると、断わりなしにその戸をあけて二人が中へ入りました。
 小屋はかなりの広さに出来ていて、正面には神棚があって、御幣《ごへい》の切り目も正しくして新しい。
 浅吉は、小屋の中へ御主人を誘《いざな》って、自分はかいがいしく一方の炉に火を焚きつけて、向い合って話をはじめました、
「ねえ、お内儀《かみ》さん、私はなにも人様の讒訴《ざんそ》をするわけではございませんが……あの方の人相をごらんなさい。昨晩も夢を見ましたよ。私は毎晩のように、このごろは夢を見ますのは、みんなほかの夢じゃございません、お内儀さんも私も、あの方に殺されてしまう夢なんです……昨夜もね、ちょうどそれ、あの無名沼《ななしぬま》なんですよ、あの沼の中に何か白いものが光って見えますか
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