さんは、こういって浅吉を振りつけて行こうとすると、浅吉の眼の色が少し変りました。
「お内儀さん……どうしても危ない、あの方と一緒に歩いてはいけません」
「何をいっているんだい、失礼な」
「どうぞ、わたしと一緒にお帰りなすって下さいまし」
浅吉は、とうとう後家さんの袖をつかまえてしまいました。これほどに思い込んで引留めることは、この意気地無しには珍しいことです。
「お放し」
それを振りもぎって、振向いて見ると、たったいま自分の首を締めた人が、そこに見えない。
「おや?」
後家さんは、慌《あわ》てて、四辺《あたり》を見廻したけれども、その姿は消えてしまっている。林の中にも、沼の岸にも、それらしいものが見えないから、
「おや、どこへおいでになった?」
後家さんが、狼狽《うろたえ》ていた時、浅吉は透《すか》さず再びその袖を取って、
「お帰んなさいまし、わたしと一緒に帰れば生命《いのち》に別条はございません」
「何をいってるんだよお前は。お前こそ、わたしにとっては気味が悪いよ」
といって、後家さんはせきこんで、林の中へ駈けて行こうとするのを、浅吉が後ろから必死の力で抱き止めて、
「お内儀
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