あなたのところの先生にお髪《ぐし》を上げておやりなさいって、お内儀さんからいいつけられたのですよ」
「まあ、うちの先生に?」
「ええ」
浅吉は浮かぬ面《かお》に、一種の恐怖をさえ浮べておりました。
「それは御苦労さま」
「ええ、お前は髪を結《ゆ》うのが上手だから、先生の髪を結ってお上げなさいと、お内儀《かみ》さんにいいつけられたものですから……」
「そうですか、それは御苦労さまでした」
お雪は愛嬌にいって、浅吉と連れ立って自分の部屋へやって来ましたが、そこへ近づくと、浅吉の恐怖と嫌厭《けんえん》の色が一層深くなって、ゾッと身ぶるいをしました。
浅吉をつれて自分の部屋へ戻って来たお雪は、障子をあけて見て、
「おや、先生がいらっしゃらない」
いるとばかり思っていた机竜之助がいませんでしたから、お雪も案外に思い、浅吉も、
「おや、どちらへおいでになったでしょう」
櫛箱をさげたまま、ぼんやり立っていると、お雪が先へ入って、
「風呂にでもおいでになったのか知ら。まあ、お入りなさい、浅吉さん」
そこで二人は入りました。浅吉はぼんやりと櫛箱をそこに置いて、炬燵《こたつ》の前にかしこまって
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