蝋燭《ろうそく》がその使命を果して、光明の犠牲を払い尽したから……しかし、それが弁信法師にとってはなんでもありません。光明には光明の使命があり、暗中には暗中の自由がある。特に弁信にあっては、明暗二つの差別が意味をなしません。
 その翌日になると弁信法師は、しょぼしょぼとして檀家《だんか》廻りをはじめました。
「ええ、皆様のおかげで、長々と御厄介になりましたが、昨晩、茂太郎の行方《ゆくえ》がわからなくなりましたものですから、私はこれから、それをさがしに参らねばなりません、お雪ちゃんの帰るまでは、とお約束をしたようなものですけれども、これも余儀ない事情でございますから、あとのところをよろしくお願い申しますでございます……御縁があらば、また直ぐに立帰って参りますが、御縁がないならば、これがお別れになるかも知れません」

         二十九

 信濃の国、白骨の温泉の宿の大きな炉辺で、しきりに猪を煮ているのは、思いがけなく繰込んで来た五人連れのお神楽師《かぐらし》と称する一行のうちの、長老株の池田といった男と、それからもう一人は、北原という同行の男――他の三人の姿の見えないところを以てす
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