がら、
「あぶねえ、あぶねえ」
と言いました。
 この時、生垣《いけがき》の蔭から、不意に槍を持って姿を現わしたのが神尾主膳です。執拗《しつこ》いこと。怪しい者を追いかけて、ここまで槍をつっかけて来たのです。
 神尾主膳には多少槍の心得があって、九尺柄の槍を座に近いところへ置き、いざといえばそれを取ることにしている。いざといわない時も運動の意味で、それをしごいてみることがある。
 今は、そのいざ[#「いざ」に傍点]というほどの場合でもなく、運動のためでもないのに、まさしく酒乱の手ずさみにこの槍がえらばれているもので、こういう際には、平生の技倆以上に思う存分にその槍を使うことが例になっている。かつて染井の化物屋敷では、この槍のためにお銀様が、危うく一命を取られるところでした。
 今はこうして、追わなくてもよい敵を、本城を留守にしておいて追いかけて来たものですから、七兵衛も驚きました。
 また厄介なことにはこういう際には、いやに眼が利《き》き出してきて、暗いところへ逃げ込んだ敵の影も、平生の視力以上に認められるだけの感能が働いてくるようです。神尾主膳の酒乱は、特に凶暴を逞《たくま》しうする
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