ですよ」といっているようです。
今にはじまったことではないが、それが神尾には不満です。神尾でなくったって誰だって、こういう危険を好む女に安心をしてはいられない。今は計るところがあるのだからいいようなものの、もしこれが本当の女房であったらどうだろう。深夜の秘密の修法には、秘密の道場があるに相違ない。その秘密室に隠されたる秘密の罪悪。子をほしがるほどの女に、娘というのはないはずだから、みんな人の妻妾――その秘密が洩れないのは、受ける者が秘密を守るからだろう。
神尾主膳はこの時、千隆寺の坊主が憎いと思いました。まして美僧でもあろうものなら、殺してやりたいとさえ思いました。
千隆寺の坊主ども覚えていろ! 思わず血走って一方を睨《にら》んだ目は、酒乱のきざした時の眼と同じことです。
それと知るや知らずや、お絹は悠々閑々《ゆうゆうかんかん》とお化粧をこらしながら、
「色は浅黒いが、ちょっと乙な坊さんですから、ことによると女の方が迷うかも知れません。しかし御安心なさいまし、こちらは役者がちがいますからね」
とお愛嬌のつもりでいったのが、はげしく神尾の神経に触れたようです。
飲まない時は酒乱
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