つきの柿の実をおびただしく手折《たお》って畑道を駈けて来る二人の少年、年はいずれも十五六。
「あ――」
といってお松と顔を見合わせ、恥かしそうに以前置捨てた剣術の道具の傍へよって、その柿の枝を結《ゆわ》えつけて肩にかける。二人の少年の勇ましい後ろ姿を見るにつけ、思い起すは宇津木兵馬のこと。
武術は人に敢為《かんい》の気象を教えるが、抗争の念を助長させたくないものだ、との優しい心づくし。
二十五
根岸に引移った神尾主膳と、お絹とは、このごろ痛切に金がほしいと思っています。
誰でも大抵の人は金がほしいと思っているが、この二人にとって、それがいっそう切実なのです。
神尾主膳はある時、つくづくと思いました、
「金というやつは女とおなじことで、出来る時は逃げても追っかけてくるが、出来ないとなると、追いかけても逃げてしまう」
お絹もまた口に出して言う、
「どうかして、お金がはいる工夫はないものかしら」
実際、金というものがない以上は、都会生活の興味の大部分は失われる。こうして不景気に隠れん坊をしているくらいなら、深山《みやま》の中も、根岸の里も、変ったことはない。
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