っている。
 子供たちはムクを中にとりまいて上りはじめる。お化けのことも、お人好しのことも、もう問題にはなっていない。
「犬ハヨク夜ヲ守ル、人ニシテ犬ニ如《し》カザルベケンヤ」
 背の高いのが、大きな声で叫び出す。
「太郎ドンノ犬ハ白キ犬ナリ、次郎ドンノ犬ハ黒キ犬ナリ」
 負けない気で、あとをつづけた鼻垂小僧《はなたれこぞう》。
「油屋ノ縁デスベッテコロンデ……」
と歌い出した涎《よだれ》くり。
 こうして犬を擁《よう》した子供らは、石段をのぼりつめて冠木門《かぶきもん》をくぐると、
「先生」
「与八さあ――ん」
「こんにちは」
「雨が降ります」
 道場の庭は、にわかに騒々しく、賑わしくなりました。
 その時分、与八はもう地蔵の彫刻をやめて、道場の内部には机が並んで、三十人ばかりの子供がズラリと並ぶ。
「先生、こんにちは」
「お師匠様、こんにちは」
 先生といわれ、お師匠様と呼ばれているのはお松です。
「みなさん、雨の降るのに、よく休まないで来ましたね」
 お松はここで三十人の子供を相手に、単級教授をはじめる、介添役《かいぞえやく》は与八。
 ソの字と、リの字の区別のつかないもの、七の
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