駄目だよ」
おでこが差出口《さしでぐち》をする。
「何で駄目だい」
「与八さんは、力があったって、お人好しだから駄目だよ」
「お人好し?」
「ああ」
どちらもお人好しの意味がよくわからないで、
「お人好しなんていうのはおよしよ、与八さんは、ありゃお地蔵様の生れかわりだって、うちのおっ母《かあ》がいってたよ」
「うちの父《ちゃん》は、与八さんという人は、ありゃお人好しだっていってたよ。だから、力があったって、喧嘩をすることなんかできやしねえ」
「力は喧嘩のためにばっかり使うもんじゃあるめえ」
「だって喧嘩の時に使わなけりゃ、力があったって詰らねえや」
「そうでもあるめえ」
その時、子供の一人が急に下の方をながめて、
「ああ、それムクが来たよ」
「ムクが来た」
子供たちのすべてが傘をあみだにして下段の方を見ると、ムク犬が首に小笊《こざる》を下げて、悠々《ゆうゆう》とのぼって来る。
今ではこの犬も、同じところの屋敷に、同じように客となっている。
そうして、小笊を首に下げては、里へ買物に行くのを仕事の一つとしている。最初は怖れていた村の子供も、今はこの犬を畏愛《いあい》するようにな
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