ない上に、子守がついていますから、お松はこうして、教育(というのも大袈裟《おおげさ》ですが)の方に身を入れることができるのであります。もう一つ幸いなことは、ほとんど絶家《ぜっけ》のようになっていて、荒れるに任せていた宏大な机の家屋敷が、これらの連中が移り住むことになってから、急に光りかがやきはじめたような有様であります。
 人間の家は、人間が住まなければ駄目なものです。
 お松のここで書いているお手本は、単に道場へ集まる子供たちに分けてやるのみならず、これから三里も五里も山奥の炭焼小屋や、猟師の家庭にまで入ります。
 どうかするとこうしているところへ、武者修行が尋ねて来ることがある。道場の名残《なごり》を惜しむためか、そうでなければ、化物退治にでも来た意気込みでおとのうて見ると、応対に出るのが妙齢なお屋敷風のお松ですから、さすがの武者修行がタジタジで、
「ははあ、では、あなたは机竜之助殿のお妹御でもござるか……」
といってお松の顔をながめ、薙刀《なぎなた》の一手もつかうものかという思い入れをする。
「いいえ、わたくしどもは、ただお留守居をしているだけなんでございます」
 そうしていると
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