大菩薩峠
他生の巻
中里介山

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)九輪《くりん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)この時|海潮音《かいちょうおん》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「彳+低のつくり」、第3水準1−84−31]
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         一

 清澄の茂太郎は、ハイランドの月見寺の三重の塔の九輪《くりん》の上で、しきりに大空をながめているのは、この子は、月の出づるに先立って、高いところへのぼりたがる癖がある。人に問われると、それは、お月様を迎えに出るのだというが、しかし今晩は、どうあっても月の出ないはずの晩ですから、茂太郎も、それを迎えに出る必要はないはずです。
[#ここから2字下げ]
天には星の数
地にはガンガの砂の数
[#ここで字下げ終わり]
 大声あげてうたいました。
 してみると、茂太郎は、星をながめるべくこの塔の上へのぼったものです。
 茂太郎が、星をながめる興味は、今にはじまったことではありません。
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