に、栗の大木へ結《ゆわ》いつけましたけれども、特に手荒に振舞うべからずとの言葉添えが与《あずか》って力ありと見え、ただ、逃げられない程度に縛ったのみで、敷物まで持って来て坐らせました。
 お銀様は、どのみち、怖ろしい目に遭うべき暫時の後を期待して、覚悟をきめてしまいました。それにしても、いよいよ合点《がてん》のゆかないのはこの一団の集まりであります。こうして、舞いつ歌いつ、よろこび楽しむ分には、さのみ世をはばかる必要はあるまいに、この山中へかくれて、そうして張抜きの大筒《おおづつ》をこしらえるわけではなし、謀叛《むほん》の相談をしているとも思われない。いかに世上おだやかならずといえども、神楽をするに、隠れ忍ぶ必要もあるまいではないか。ことに打見たところでは、それぞれ仮面をかぶり、立派な衣裳道具を備えている。なお一団のものの会話が、中古の雅文体をそのままで、どうかすると近代の訛《なま》りが入る。大将分らしい猩々の音声は、清く澄みわたって、水の滴《したた》るような若さがある。とはいえ、一団の人、いずれも仮面《めん》をかけているから、品格のほども、年配のほども、一切わからない。狐狸妖怪の世界
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