の場へ入って来て、
「太夫に申し上げまする」
「何事にて候ぞ」
「ただいま、怪しい奴が、これへ忍んで参りたるによって、この通り取押えて引立てましてござる」
「なんと、怪しい奴が?」
どちらが怪しいのだかわからない。この奇怪極まる山中の、仮面《めん》の集まりを襲うてくるもののある以上は、やはりそれ以上怪しいものも存在するかに見ゆる。
「こやつでござりまする、われわれの楽しみをさまたげんとて来りし奴、目に物見せてくりょうと存じまする」
猩々の面前に引据えたのは、覆面にして双刀を帯する身、まさしく武士の姿。
「覆面を剥《は》いで見い」
「畏まりました」
篝《かがり》の前へ押向けて覆面を剥ごうとする。そうはさせまいとする。やがて意外のさけび、
「やあ――女だ」
床几《しょうぎ》に腰をかけた猩々《しょうじょう》の仮面《めん》は、
「おお、御身は女性《にょしょう》にて在《おわ》するな。何とて斯様《かよう》なる山中へ、女性の身一人にておわせしぞ。まして男の装いしたる有様こそ怪しけれ」
ことさらにいうとも思えないほどの自然な調子、朗々たる音吐《おんと》で、雅文体の問答をしかけられましたので、
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