込んで来たような次第なんでございます……エエ、その頼まれました御本人の行方《ゆくえ》、それをそのまま探していたんでは、なかなか埒《らち》の明かない事情がありますから、まずこういう具合に……エエと、この街道を琵琶を弾《ひ》いて流して歩いたお喋《しゃべ》りの盲法師《めくらほうし》を見かけたお方はございませんか、こういって尋ねて歩いたのが、つまり成功の元なんですね。将を射るには馬を射るという筆法が当ったんで。つまりそれでとうとう甲州街道の上野原というところで、めざす相手を射留めたという次第でございます……」
 金助は、膝を金包に近いところまで乗り出して、得意になってべらべらとやり出しました。
 金助のべらべらやり出した潮時《しおどき》を、お銀様も利用することを忘れませんでした。
「そうして、甲州の上野原のどこで、その盲法師を見つけました」
「それがその……」
 金助は、いよいよ得意になって、顔を一つ撫で廻し、
「府中の六所明神様でひっかかりを得ましたものですから、それからそれと糸をたぐって、とうとう甲州の上野原で突留めました。上野原は報福寺、一名を月見寺と申しましてな、お宗旨《しゅうし》は曹
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