に集中させる。まだ整理しきれない座敷の中で、その晩お絹は、行燈《あんどん》の下に机を置いて、一心に手紙を書き出しました。
二十三
青梅《おうめ》の裏宿の七兵衛は、この時分、裏宿の家におさまって、雨降り仕事に、土間へむしろを敷いて、藁《わら》を打って、しきりに草鞋《わらじ》をこしらえておりました。
こうして、あたり[#「あたり」に傍点]前の百姓家におさまって、雨降り仕事に草鞋をこしらえているところを見れば、だれが見ても、あたり[#「あたり」に傍点]前の百姓で、これを稀代《きだい》な盗賊と見るものはありません。
七兵衛自身も、その本心をいえば、どのくらい、このあたり[#「あたり」に傍点]前の百姓を有難いことだと思っているか知れないのです。そうして、あたり[#「あたり」に傍点]前の百姓になりきれない自分というものを、こういう際には恨みにも思うほどに、心もおだやかなものであります。
多年、誰とて、自分の内職をあやしむものはないようなものの、いつまで、この隠しごとが現われずにいるものではない。早晩、三尺高いところへ自分の首がさらされる運命の来《きた》ることを思えば、
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