ーむ」
 米友は、駒井の面《かお》を見ていると、むらむらとして、衷心《ちゅうしん》の憤りと、憎しみとが、湧き起るのを禁《と》めることができないと見えて、その拳《こぶし》がワナワナと動いて、頓《とみ》には口も利《き》けないでいるのを、駒井はそれと知る由もないから、尋常に、
「お前はこの寺にいたのか。ナゼ甲府を出る時に、だまって出ました」
「だまって出ちゃ悪かったかい」
 駒井が尋常に出るのを、米友は、喧嘩腰ですから、この時、駒井が怪しみをなしました。しかし、駒井自身においては、よくこの男の性格を知っているつもりだから、至極おだやかに、
「帰るなら帰るように、わし[#「わし」に傍点]にも一言いってくれるとよかった」
 しかしながら宇治山田の米友は、この時、堪忍袋《かんにんぶくろ》が切れたように飛び上って、
「駒井能登守、能登守……」
 拳を握って、歯をギリギリと噛み鳴らしましたから、当の駒井よりは卒塔婆小町の婆さんがおどろきました。
「友さん、どうしたの?」
「どうしたんでもねえんだ、腹が立ってたまらねえんだ、こいつの面《つら》を見るとおいらは腹が立って、口惜《くや》しくって、物が言えねえ
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