とであります。
 申すまでもなく、わが主人の専門は、西洋の兵術と武器とであります。その道においてはならぶもののないほどの新知識であって、同時に、そのころの西洋科学の粋を味わうことにおいては、人後に落ちなかったものです。
 ですから、今も隠れて、専らその方面の研究に没頭しているものに相違なく、従って参考書に不足を感じたればこそ、こうしてわざわざ駈けつけたものに相違ない。
 ところが、いま主人の抜き出している書物という書物が、みな一学の意表に出づるものばかりでありました。
「Logos《ロゴス》――これは理学の本でございますか」
「左様、道理とか言葉とかいうのだろう」
「Mani《マニ》――これは何を書いたものでございますか」
「マニ……土地の名か、或いは人の名ではないか」
「Hom−ousia――ホモウシアと読んでよろしうございますか」
「そう読むよりほかはあるまい、何の意味かわし[#「わし」に傍点]にもわからぬ」
「次は Monologion《モノロジオン》――これは、オランダ語でございますか、イギリス語でございますか」
「その原書はイタリーのものだそうだ、太宰春台《だざいしゅんだい》
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