さい」
下でお梅も人が悪い。助けを呼ぶ声を聞き流して、腹をかかえて、声を立てないで笑いころげています。
「真ッ直ぐに言っておしまい」
お角は金助を締めたり、ゆるめたり。
「親方、あの神尾主膳様が近いうち、田舎《いなか》を引払ってこちらへおいでなさるそうで」
「そんなことを聞いてるんじゃありません、お嬢様をどこへやりました」
「それは存じません。どうかもう少しここをおゆるめなすって下さい、咽喉《のど》がつまって声が出ませんから」
「正直にいっておしまい、あのお絹のおたんちん[#「おたんちん」に傍点]に頼まれたんだろう」
「決して、そういうわけじゃございません、現にこうして、お嬢様がここにお休みなすっていらっしゃるとばかり存じて、上って来たようなわけでございますから……」
「しらばっくれちゃいけないよ、今お前、下で何といったい、お嬢様にそっと申し上げてしまったとか、お力になって上げたとかなんとか言っていたろう、お前でなけりゃ、手引をして逃がす奴はないんだよ」
そこで金助がスッカリ泥を吐かせられてしまったけれど、別段、この野郎が計略を構えて、お銀様をおびき出したというわけではない、ただ
前へ
次へ
全288ページ中174ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング