い……第一、こんな若い娘をひとり留守居に置いて家をあけるなんて、時節柄、物騒千万」
 金助が減らず口を叩いて容易に帰ろうともしないから、お梅が迷惑がりました。迷惑がったところで、遠慮する人間ではなく、ずるずるべったり、泊り込んでしまうつもりかも知れません。
 その時、二階でミシリと音がしたものだから、金助が例によって仰山《ぎょうさん》な身ぶりをし、
「おや!」
 実は金助も、この時まで二階にお銀様のいる約束をわすれて、お梅にからかっていたのに、このミシリという音で気がまわり、
「お嬢様が二階においでなさるんでしたっけね」
「ええ」
「御機嫌はいかがです、あのお嬢様の」
「別にお変りもございません」
「お嬢様もお一人で退屈でしょうね」
「どうですか聞いてごらんなさい」
「毎日、ああして、ひっそく[#「ひっそく」に傍点]しておいでなさるのも、お大抵じゃありますまい」
「お嬢様は出るのがお嫌いなんですから、仕方がありません」
「毎日、ああして、何をしていらっしゃるんですか」
「歌をおつくりになったり、本を読んだりしていらっしゃいます」
「字学の方がお出来になるんだから、御不自由はないさ。お家
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