山田の米友は、この女のために、無用の力を絞っていました。

         十八

 両国橋の女軽業《おんなかるわざ》の親方お角は、その夕方自宅へ帰って来ると、早くも家の様子でそれと知って、歯ぎしりをして口惜《くや》しがったのは申すまでもありません。
「ちぇッ!」
と男のするように舌打ちをして、二階へ上って見る気にもならなかったのです。
「わかってる、わかってる、知恵をつけた奴はわかってるよ、何かにつけてケチをつけたがるあのおたんちん[#「おたんちん」に傍点]め、どうするか覚えていやがれ」
とののしったのは、当のお銀様のことではありません。また、お銀様に向ってよけいなことを喋《しゃべ》った金助のことでもありません。お角はそれを通り越して、いちずに向っているのがお絹のことです。こうしてお銀様を逃がしたのは、てっきり[#「てっきり」に傍点]お絹の指金《さしがね》にちがいないと、いちずに思い込んでしまいました。
 もとより、これは前例のないことではない。いつぞやも、せっかく人気を集めた清澄の茂太郎を中途からかっぱら[#「かっぱら」に傍点]って、こちらに鼻を明かせたのもあいつの仕業《しわざ》
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