いは無縫塔、或いは五輪、或いは宝篋印《ほうきょういん》、高さは一丈にも二丈にも及ぶものがあって、米友の怪力を以てしても、ちょっ[#「ちょっ」に傍点]とは動かし難いものばかりであります。
 しかし、この男は、それらのいずれともつかずに、しきりにそれをゆすり試みて歩いている。その様、墓を動かして、そこから何物をか聞こうとするもののように見える。
「墓はこの世からあの世へ通ずる道の蓋《ふた》である」と誰やらが教えた。さればこそ、この男は、蓋を開いてあの世の人のたよりを聞きたがっているのだ。
 ほどなく米友は、非常に大きな五輪の石塔の前に立っている。石塔の高さは台石ともに二丈もあろう。碑面の文字は、模糊《もこ》たる暮色につつまれて見えず、米友は、呆然《ぼうぜん》として腕組みをしながら、立ってその石塔をながめていると、
「友さアん、この石を取って下さいな、この石があんまり重いので、出ることができませんわ」
 米友はハッと自分の耳を疑いました。今の声は果して墓の底から出た声か、それとも自分の耳から出たのか。
「え、何といった」
 米友は両手を耳に当てて、屹《きっ》と五輪の塔の空輪《くうりん》の上を
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