行も沢山取り、薬礼の実入《みいり》も多分にあり、位も高くなるし、金も出来るのに……」
「先生、わかってるよ、そうくりかえして愚痴をこぼしなさんなよ、了見を見られちまうじゃねえか」
 忠義なる子分は聞き兼ねて、先生に忠告を与えても、先生は顧みる色なく、
「知行もたくさん取り、薬礼の実入も多分にあり、位も高くなるし、金も出来るけれども、いい子供が出来ねえ」
といい出しましたから、一同がまたキョトンとした顔です。そうすると、悄気《しょげ》ていた道庵先生が少しくハズミ出して、
「さあ、そこへ行くとこの道庵なんぞは大したもんだぜ。林子平《りんしへい》じゃねえが、親もなければ妻もなし、妻がなけりゃあ子供のあろう道理がねえ。板木《はん》がねえから本を刷って売ることもできねえ。この通りピイピイしているから金なんぞは倒《さか》さにふるったって出て来ねえんだ。だから、まだなかなか死にっこはねえよ、安心しろよ」
 ここで見事に脱線してしまいました。初めは処女の如く、終りは酔漢の如く、すっかりボロ(ではない生地《きじ》)を出してしまったのはぜひもないことで、こう来るだろうと思っているから、聴衆もさのみは驚きも
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