ずの敵が容易に来ない。一陣を斬りくずして、余れる勢いでこの孤城に殺到して来るべきはずの敵が、なかなかに来ないのであります。
「久助さん……来ませんね」
「ここに隠れたことを知らずに、通り越したのかも知れねえぜ」
「そうだとすれはまたひきかえして来るかも知れません」
「ナアニ、そのうちには、お大名のお通りがありますよ。お通りがあれば、あんな悪い奴は、蜘蛛《くも》の子を散らすように逃げてしまいますからね」
 ここで、万々一のお大名行列の威力まで引合いに出して、お雪に力をつけてみたのですが、お雪の耳へは入らないで、
「先生がかわいそうだわ」
「どうも仕方がございません、助ける手段がねえのだから」
「先生も悪いわ、早く馬で逃げてしまえばよかったのに。ですけれども、そうすれば、わたしたちが直ぐにつかまってしまいます……でも、同じことなら、眼の見えない人より、眼の見える人が先に殺された方がよかったかも知れない」
「あ、人の足音がするようです、静かに――」
 久助はお雪をかかえて、身体《からだ》を固くする。
 しかし、人の足音と思ったのは僻耳《ひがみみ》でしょう。そうでなければ表の戸を守っている主《
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