むなく、相当の時間と茶代とを置いて、この立場を出立しました。四人はいい合わさねど忌々《いまいま》しい面《かお》をしている。
峠の上の立場《たてば》――五条源治を素通りした竜之助の一行は、やがて、いのじ[#「いのじ」に傍点]ヶ原の一軒家へかかろうとする時分に、後ろから、
「おおい」
と呼ぶ声。
その声を聞くと駕籠《かご》の中のお雪が、まず恐怖に打たれました。
「おおい」
二度《ふたたび》呼ぶ声。久助は聞かないふり[#「ふり」に傍点]をしていると、堪りかねたお雪が、
「久助さん、おおい、おおいって、呼んでいるのは、あのさむらい[#「さむらい」に傍点]たちじゃありませんか」
「そうかも知れねえ」
「なんだか、気味の悪い人たちですね、麓《ふもと》でも、わたしの駕籠をジロリジロリと見ていました、いそぎましょう」
「急ぎましょう」
急ぐといって、ここは下りに向った塩尻峠ではあるが、見通しの利《き》く野原の一筋路。
もし隠れるとすれば、いのじ[#「いのじ」に傍点]ヶ原の真中に、屋根に拳石《けんせき》を置いて、中で草鞋《わらじ》を売る一軒家があるばかりです。
「おおい」
と三たび呼ぶ声。こ
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