斎藤篤信斎弥九郎が、その門弟のうちから十余人の腕利《うできき》を選抜して「勇士組」と名づけ、これを長州へ送ってやったことがある。仏頂寺以下もそのうちの一人で、最初のうちはよかったが、後にたち[#「たち」に傍点]が悪くなって、京阪の間で悪事を働いたものだから、師の篤信斎の怒りを買い、実はもう、とうの昔に殺されていなければならないはずの男でありました。それがまだこの辺を宙にさまようて出没しているのは奇怪千万《きっかいせんばん》のことで、多分、再び、京阪の間《かん》へ舞いのぼり、勤王や、新撰組の中へ潜《もぐ》って何か仕事をしようとするつもりと見える。しかしながら、長州あたりでも、新撰組でも、もうこれらの連中は亡者扱いにしているから、真実に相手にする者はなかろうと思われる。といって、腕にかけては、その当時といえども、この辺の連中がそうザラにあるべきわけのものでもありません。
自然用うるところのない亡者どもは、そのあり余る手腕は悪い方へ使えばといって、善い方へ使う気づかいはない。
厄介千万なのはこの類《たぐい》の亡者。
荒木又右衛門気取りで酒を飲んでいるが、本物の荒木が来てさえも、そうは容
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