婦にしては年が違う、兄妹にしては他人行儀なところがある、付人《つきびと》も仲間《ちゅうげん》小者《こもの》ではない、どこの藩中という見当も、ちょっ[#「ちょっ」に傍点]とつきかねる、そうかといって、ただの浪人にしては悠暢《ゆうちょう》な旅だ」
 横目でジロリジロリと竜之助の一行を眺めましたが、竜之助の笠はかなり深いのに、垂《たれ》のない駕籠で、お雪の姿はありあり[#「ありあり」に傍点]と見えましたから、離れると、
「ちょっ[#「ちょっ」に傍点]と可愛らしい娘《こ》だ」
「人好きのする娘だ」
といってカラカラと笑い、
「昨晩はかわいそうに」
「そうそう、丸くなって逃げ出したが、あれっきり姿を見せなかった」
 これは酔いつぶされて逃げ出した女のこと。
 やがて、峠の上、立場《たてば》の茶屋へ来るとそこで一休み。
 仏頂寺弥助は鍵屋の辻の荒木又右衛門といったような形で縁台に腰をかけ、諏訪湖の煮肴《にざかな》を前に置いて、茶の代りに一酌《いっしゃく》を試みている。
 この辺の連中、腕はたしかに出来るには出来るが、ややもすれば無頼漢になってしまう。これより先、江戸三剣士(千葉、桃井、斎藤)の一人
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