、信長は自分の甥のことでもあるし、自分も心ならず敵に従っているんだから、許してもらおうと思って、その茶入を土産《みやげ》に持って来たんでしょう。それを、むざむざと一言《ひとこと》も聞かずに斬ってしまうなんて、わたし、信長という人はにくらしいわ。まして自分の本当の伯母さんなんでしょう。だから、信長という人は、あとで自分の家来の明智光秀に殺されちまったんでしょう。自業自得というものですわ、ねえ、先生」
お雪は今度は竜之助の方へ加勢を頼みに来て、
「ねえ、先生、あなたは、どう思っていらっしゃるの、やはり、お万殿をかわいそうだと思っていらっしゃるでしょう。信長という人を、にくい人だとお思いにならない?」
「けれども、この時の習いで、敵に肌をゆるした女をたすけてはおけなかろう」
竜之助が答えますと、お雪は非常に失望しました。
「まあ、先生も、そう思っていらっしゃるの。お万殿だって、好んで敵にゆるしたんじゃありますまい、いくさにまけたから仕方がなかったのでしょう。世間にはずいぶん、よい夫を持ちながら、好んでほかの男に操《みさお》をゆるす女があります。では、そういう女は、殺しても足りないのね。お
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