じ色に過ぎない。これでは、歩いても、歩かなくても、同じようなものだ。
 ただ、足がなんともいえず軽快である。同じような藪の中と、同じような燈籠をいくつ数えて歩いても、疲れるということを知らない。そこで、おなじような道を歩む。
「もし」
 ふと、その燈籠の一つの下で人影を見出したから、歩みをとどめて竜之助が問いかけました。
「これは真直ぐに行ってよいのですか」
 問われたのは女の子です。髪をかむろ[#「かむろ」に傍点]に切りまわし、秋草をおぼろ染め[#「おぼろ染め」に傍点]にしたような単《ひとえ》の振袖を着て、燈籠の下に小さく立っていましたが、竜之助にたずねられて、ニッコリとさびしく笑い、
「どこへおいでになりますか」
「白骨《はっこつ》の温泉へ……」
「白骨……そんな温泉はこの近所にはございませんよ」
「ない?」
「ええ、ハッコツなんて名前の温泉は、この近所にはございません」
「ないはずはないのだが……」
「それでは字に書いて見せて下さいな」
 請《こ》われて竜之助は、金剛杖を取り直して、地上に、「白骨」の文字を認《したた》めました。その白骨の文字が、なんという鮮《あざや》かな青味を持っていることでしょう、さながら、翡翠《ひすい》の光を集めたようにかがやきましたので、竜之助もその文字に見入りますと女の子は、
「それはハッコツとお読みになっては違います、シラホネと読むのでございます」
「どちらでもいいではないか」
「いいえ、シラホネとお読みにならなければ違います」
「それでも、白馬《しろうま》ヶ岳《たけ》をハクバと読むように……」
「白骨《しらほね》の温泉は、昔|白船《しらふね》の温泉といいました、それを後の人がシラホネと読むようになりました。それをまたハッコツとお読みになったのでは人が迷います」
「では、そのシラホネへ行く道は?」
 竜之助が、素直《すなお》に問い返しますと、路上に記された「白骨」の文字を、またたきもせずに見ていた女の子が、
「そうですね……やっぱり、ハッコツの方がようございますか知ら。シラホネと読むのも、ハッコツと読むのも、同じようなものですけれど……」
 竜之助の問いには答えないで、女の子はしきりに文字の末に拘泥《こうでい》していますから、
「読み方はドチラでもよろしい、わしは、ただそこへ行く道を知りたいのだ」
といいますと、女の子は、
「それを
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